グッピーエイズに関する考察 最新版(2004/8/5著)

 まず、始めにお断りをしておきますが、私はこの手の専門家でもなんでもありません。ここに記載してある内容は、多方面より私が見聞きしたことと、これまでの経験からグッピーエイズについてまとめたものです。あくまでも参考としてご閲覧いただき、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

 グッピーエイズが日本で猛威を振るうようになってから随分と年月が経っていますが、未だその蔓延に歯止めはかかっていません。症状自体は緩和してきたと言われますが、その蔓延率は一向に改善されていないと思われます。この病気の大きな問題点は、非常に感染力が強いということと、発症せずにキャリアーとなっている固体が健全な個体として流通している点であると考えられます。私の個人的な意見としては、現在流通しているグッピーは、国産、外産を問わずウイルスフリー(無感染)の個体を見つけることは非常に困難であると考えています。ウイルスというと直ぐに外産と思われる方も少なくないと思いますが、外産は長期に渡る輸送のために、過酷な環境変化に心身共にさらされて極めて病気を発症し易い状態になっているだけで、キャリアーの有無については国産も外産も大差は無いと思われます。

 この病気から自分のグッピーを守る最善の方法は、絶対にキャリアーの疑いがある個体をを持ち込まないことですが、これはよほど卓越した知識と経験、そして入手ルートを持っている限られた人でなければ難しいでしょう。一般レベルでは、キャリアーとノンキャリアーを確実に分別することは不可能であると言わざるを得ません。つまり、日本中のグッピーブリーダーや愛好家の水槽で泳いでいるグッピーはほとんどキャリアーであるという前程の元に、グッピーの購入及び飼育をする必要があるということです。
 発症すると恐ろしい病気ですが、発症しなければ普通のグッピーと同じであり、発症せずに生涯を終えることは珍しくありません。適切な飼育環境下では、この病気に悩まされることはほとんどないのです。






 (1)症状
  典型的な症状としては、水面を力なく泳ぎ、尾を閉じて、くねくねとした泳ぎになります。ウイルスに感染してから即日発症する場合もありますが、概ね5日以内には発症するケースが多いようです。水面を泳いでいる時点で、酸欠ではないかと思われる方が多いですが、通常の飼育でグッピーが酸欠になることは滅多にありません。水質が著しく悪化しているか、この病気を発症しているかのどちらかだと思ったほうがいいでしょう。


 (2)発症の要因
  水質の悪化や健康不順によって発症するケースと、他の個体から感染して発症するケースがありますが、個人的には後者のケースが多いと思います。一番避けたいのは、新しく購入したグッピーを既存のグッピー水槽に入れてしまうことです。既存のグッピーと新しいグッピーのどちらが発症するかは場合によって違いますが、どちらかがキャリアーであれば高い確率で発症します。
  新しいグッピーを小慣れた水に入れたいと思って、それまで回していた水槽をそのまま使う場合なども、以前に魚が入っていた水槽の場合は同様に発症の原因となります。新規にグッピーを迎える場合は新しくセットした水槽が無難です。複数の水槽を維持している場合は、混泳させなくても飛水などでも感染することがあります。網や清掃用具は、水槽の数だけ用意できれば理想ですが、水槽本数が多いと無理があるので、使用するたびに水道水でよく洗い流してから使用します。基本的には洗い流すだけで大丈夫のようなので、念入りな消毒などはしなくてもいいと思います。
   
  もう一つのポイントとして、個体数が多いと発症し易いように思います。他品種はむやみに混泳させないのが大前提ですが、建て直しや新品種、バージョンの作成などでどうしても混泳が必要なとき、1〜2ペアでの少数混泳の場合、経験上、ほとんど発症したことがありません。A種とB種を混泳させると仮定して、A、B共に多数の場合やA,Bのいずれかが多数であった場合は発症するが、A,B共に少数であれば発症しない。ということが起こります。発症する場合、少数派と多数派ではどちらが発症するかという点については一貫性がありません。どちらもあり得ます。

  また、稚魚のハリ病もこの病気の一種だと考えられます。よく、産卵箱に入れているとハリ病になり易いとか言われますが、私は全くそうは思いません。産卵箱の一番の欠点は水質が悪化し易いということですが、ハリ病は昔は無かったらしいので水質や環境が原因であるとは考えにくいのです。私が思うには、親魚がキャリアーであった場合、稚魚は生まれた瞬間に感染することが原因だと考えています。ただし、稚魚というのは生まれた瞬間に急速に環境に対応する能力が備わっていると思われるので、通常は発症しません。稚魚が病気や奇形で生まれるのは、概ね親魚の健康状態が原因だと思います。私は、産仔にはほぼ100%産卵箱を使用しますし、時にはそのまま2週間ぐらい飼育することもありますが、ハリ病になることは滅多にありません。


 (3)対策と治療法
  対策としては、水質を常に良好な状態に保つことと、外部からグッピーを導入する時や混泳をさせる場合は、極めて慎重に行うことぐらいしかない。予防として、グッピーを移動させる時は、予め水槽に塩を入れておくのも効果があります。
  治療法としては、塩の投入が最も効果的だと思っています。投入量は、飼育水10リットルに対して塩50g(濃度0.5%)が基本です。初めて入れるときはその量の多さに戸惑うものですが、使う塩は粗塩でいいので、飼育水槽に躊躇することなく投入してください。通常は1〜3日ぐらいで改善の兆候がでてくるはずですが、効果が無い場合は少しずつ塩を1%濃度ぐらいまで足していきます。が、最初の3日で効果がないと治癒は難しいと思われます。早期治療が鉄則なので、グッピーの調子が悪い感じたら直ぐに入れてください。尾を完全に畳んでしまうぐらいになると手遅れとなることが少なくありません。水温は22℃以下が好ましい様ですが、24℃ぐらいでも構わないと思います。ただ、28℃以上の高水温は避けた方がいいでしょう。<重要>適切な処理の結果症状が改善しても、症状が無くなってキャリアーとなっただけで完治した訳ではないことを認識しておいてください。
   
  塩の効能としては、グッピーの負担を軽減し、新陳代謝を活発にして、治癒力を高めることにあります。その為に、極めて早期の段階で体力があるうちに投入することが大事になるのです。俗に言う、塩の殺菌効果については特筆すべき効果は得られないと思います。特に、グッピーの様々な病気の原因としてよく紹介されるカラムナリスなどは、0.5%濃度の塩水は良環境であり、カラムナリスが弱体化する為には、1%の塩分濃度が必要とのことです。

  もし、あなたが完全にウイルスフリーのグッピーを入手したいと考えていたら、こういうお店をさがしてください。「えっ?クスリ?塩?そんなの使ったこと無いけど病気なんか一度も出たことないよ。」←多分これなら大丈夫です。

以上、簡単にまとめてみましたが、上記の内容はあくまでも私の推測にすぎませんので参考程度にご活用いただき、一人でも多くの方がグッピーエイズを克服されることを願っています。